「夫がパタニティブルーかも?」と感じる人、必読!
この記事では、パタニティブルーについて、主な身体・精神症状、考えられうる原因、対策を、マタニティブルーとの違いを踏まえてご紹介します。家事分担など夫婦で支え合うサポート方法、保健センターや精神科などへの相談方法を網羅し、夫自身の休息や趣味時間の確保、気持ちの吐き出しといったセルフケア方法もお伝えします。早期発見で夫婦の絆を守りましょう。
パタニティブルーとは
パタニティブルーの定義
パタニティブルーとは、妻の出産をきっかけに夫(父親)が一過性の情緒不安定や抑うつ気分に陥る状態を指します。子どもが生まれることによって、父親としての責任感や不安などの、不安定な心理状況が生じることがあります。
多くの場合、産後数日から数週間の間に発症し、感情の起伏が激しくなったり、イライラや不安感、無力感などを感じるのが特徴です。重症化すると育児に対する意欲低下や家族とのコミュニケーション不足を招くことがあるため、早期の気づきと対処が重要とされています。
マタニティブルーとの違い
マタニティブルーは母親側の産前産後のホルモン変化による特有の情緒不安定(や心身の不調)を指しますが、パタニティブルーは父親側の同様の変調です。
両者には発症要因や症状の傾向に若干の違いがあるため、以下の表で整理して比較します。
パタニティブルー | マタニティブルー | |
---|---|---|
主な対象 | 初めて父親になる男性 ※第二子以降で起こる場合もある | 産前産後の母親 |
発症時期 | 産後1週間以内~1ヶ月頃が多い 妻の妊娠中から心身の調子を崩すパパもいる | 医学的には、「マタニティブルーズ」産後3~10日頃 妊娠中にも気分の落ち込みや不安感、焦燥感を感じる人が多い |
原因の要因 | 環境変化への適応ストレス 育児への不安 夫婦関係の変化 | 急激なホルモンバランスの変動 (エストロゲン・プロゲステロンのホルモン量の急激な変化) 出産や育児への不安 |
継続期間 | 数週間程度で自然軽快することが多い | 2週間程度で改善する場合が多いが、長引くと産後うつのリスク |
症状の特徴 | イライラ、焦燥感、無力感、疲労感 | 涙もろさ、不安感、自己肯定感の低下、疲労感 |

“とつきとおか”かけてお腹の中で胎児を育てて徐々に母性を育んでいくママに比べ、(生まれるまで実感が湧かず)子の誕生後に急激に責任感や不安感に襲われるパパもいるようです。一方で、共感能力や寄り添う気持ちが大きいばかりに、妻のつわりに共鳴するように同時期に気持ちが悪くなったり早期から心身の調子を崩すパパもいます(←うちのおパパもそのひとりです:心身ともに辛そうでした)。パタニティブルーが「男性版マタニティブルー」と言われる所以はこのあたりにありそうです。
マタニティブルーについては、別ページ「【マタニティブルー対策】妊娠中や産後にうつにならないための予防と解消法をまとめてみた」でご紹介しています。
パタニティブルーの症状
代表的な症状
不安や焦りを感じやすい
「子どもをうまく育てられるだろうか」「仕事との両立は大丈夫か」といった先行きへの不安が強くなり、予想や計画がうまくいかないときに焦燥感にかられます。睡眠中にも考え事が頭を巡り、心が休まりにくいのが特徴です。
感情の起伏が激しくなる
些細なことで悲しみや不安に襲われ、突然涙があふれるなど、気分の落ち込みと高揚を繰り返します。特に育児中にパートナーや周囲の些細な言動がきっかけで強い感情が揺さぶられることが多いです。
イライラしやすくなる
赤ちゃんの泣き声や家事・育児の負担に対して、以前よりも過敏に反応しやすくなります。自分でもコントロールしきれないほど怒りやすい状態が続き、夫婦間のコミュニケーションに支障をきたすこともあります。
身体的な症状
食欲不振
ストレスや不安感から食事への興味が薄れ、食べる量が減ることで体重が減少したり、栄養バランスが崩れたりします。特に朝食を摂れない、昼以降に急激に空腹を感じるといった不規則な食習慣が見られます。
睡眠障害
赤ちゃんのお世話や心配事で夜中に何度も目が覚め、深い睡眠がとれなくなります。日中の眠気や集中力低下、極端な場合は入眠困難や早朝覚醒を伴い、疲労が蓄積しやすくなります。
疲労感
精神的なストレスに加え、家事・育児の負担から慢性的な疲労感が続きます。休息をとっても疲れが取れず、常に身体がだるく、やる気が起きにくい状態に陥ります。
パタニティブルーの原因
妊娠や出産によるホルモン変動が男性にはないため、主に精神的なストレスや不安、経済的な心配などが原因と言われています。
【比較】女性の場合、妊娠中には、妊娠を維持するためにエストロゲンとプロゲステロンを大量に分泌しますし、出産で胎盤が排出されると、体内のエストロゲン量とプロゲステロン量が大きく低下する(ほぼゼロになる)ため、急激なホルモンバランスの変化が起こります。急激なホルモンバランスの変化が自律神経の働きに影響をすると、心身の不調を感じやすくなります。これがマタニティブルーの主原因です。
環境の変化への適応
新しい家族を迎えることで、生活リズムや家計、住環境、対人関係に大きな変化が生じます。これらの変化に対する適応がうまくいかないと、心理的負担が蓄積しやすくなります。
以下の表は、特にストレスが高まりやすい環境要因を整理したものです。
環境要因 | 主なストレス内容 |
---|---|
生活リズムの変化 | 夜泣き対応による睡眠不足、家事・育児時間の増加 |
経済的負担 | 教育費や医療費の増加、育休取得による収入減 |
職場環境の変化 | 育児休業からの職場復帰への不安、長時間労働 |
住環境の制約 | 居住スペースの狭さ、実家からのサポート不足 |
育児への不安やプレッシャー
初めての育児では、何をどうすればよいのか分からない不安が大きくなります。
赤ちゃんの健康管理、ミルクの量、夜間授乳のタイミング、予防接種など、情報量の多さに圧倒されることもしばしばです。また、SNSや周囲の先輩パパ・ママの「理想的な育児像」と比較して自分を責めてしまうケースもあり、過度なプレッシャーが自己肯定感を下げる要因となります。
夫婦関係の変化
子どもの誕生によって夫婦の役割分担やコミュニケーションのパターンが変化します。
例えば、妻の睡眠不足や授乳対応に夫も協力しようとするあまり、家事や仕事との両立に悩むことがあります。また、育児方針や家事分担をめぐる意見の食い違いが増えると、夫婦間のすれ違いや対立がストレス源となり、パタニティブルーの引き金となり得ます。
【夫婦のすれ違いと産後クライシス】
主に、妻のホルモンバランスの変化や子育ての負担、コミュニケーション不足などが原因で、夫婦の愛情が冷めたり、イライラが募ったり、夫婦喧嘩が増えたりすることがあります。最悪の場合は離婚にまで至ってしまうこともあります。
産後クライシスについては別ページ「【産後クライシス対策】夫婦円満/夫婦仲修復で離婚を防ぐための夫婦関係構築ガイド」でご紹介しています。
パタニティブルーの期間
パタニティブルーは、産後間もない父親に見られる一過性の心の揺らぎですが、発症時期や持続期間には個人差があります。ここでは一般的な傾向と長期化した場合の注意点について詳しく解説します。
いつからいつまで続く?
パタニティブルーは、赤ちゃんが生まれてから数日以内に症状が現れ、早い場合は産後1週間以内にピークを迎えます。個人差はありますが、ほとんどの場合は出生後2~3週間以内に自然と収まっていくようです。
項目 | 目安の時期 | 特徴 |
---|---|---|
発症開始 | 産後0~7日 | 赤ちゃんとの対面や育児開始による急激な環境変化 |
ピーク | 産後7~14日 | ホルモンバランスやライフスタイルの変化で情緒不安定に |
回復期 | 産後14~21日 | 育児リズムに慣れ、徐々に気分の波が落ち着く |

我が家のように、パートナーの妊娠中から心身の調子を崩すパパもいますね。まるでつわりがうつったかのように、気分が悪くなったり酷い頭痛に悩まされたり、気分の落ち込みで不安定な状態で、私も心配でした。パタニティブルーが男性版マタニティブルーと呼ばれる理由がよく分かった経験でした。
この期間はあくまで一般的な目安で、仕事内容や家族構成、個人の性格によって前後します。気になる場合は早めに専門家に相談しましょう。
長期化する場合は?
通常3週間ほどで軽快するパタニティブルーですが、以下のような場合は症状が長引くことがあります。
- 育児ストレスや睡眠不足が続いている
- 職場復帰や家計への不安が強い
- サポート不足で一人で抱え込みがち
症状が産後1ヶ月を過ぎても改善せず、イライラや不安感、無気力が続く場合は、育児うつの可能性も否定できません。早めに以下の窓口へ相談しましょう。
- 地域の保健センターや市区町村の子育て支援窓口
- 産後ケア施設(宿泊型・通所型)
- 精神科・心療内科
パタニティブルーの対処法
夫自身でできる対処法
十分な休息をとる
育児と仕事で疲労が蓄積すると情緒不安定になりやすいため、1回15〜30分の仮眠や夜間の睡眠時間を確保する工夫をしましょう。週末はまとまった睡眠時間をとることを心がけると回復が早まります。
趣味の時間を確保する
ストレス発散や気分転換に役立つ趣味や軽い運動の時間を、週に数回スケジュールに入れてみましょう。ゴルフ、ランニング、読書、音楽鑑賞など、自分が楽しめるアクティビティを定期的に行うことで心身のリフレッシュにつながります。
気持ちを吐き出す
抱えている不安やプレッシャーを一人で抱え込まず、信頼できる友人や先輩パパに相談してみましょう。SNSや育児コミュニティで体験談を共有することも、自分だけじゃないと実感できる手段です。
妻ができるサポート
夫の気持ちを理解しようと努める
「大変だったね」「ありがとう」と声をかけ、夫の話に耳を傾けましょう。相手の気持ちを受け止めるだけで孤独感が和らぎ、心の負担を軽減できます。
家事や育児を分担する
家事・育児のタスクを見える化し、スケジュール表やホワイトボードで共有しましょう。食事準備や週末の買い物など、具体的な役割を決めることで協力体制が整います。
感謝の気持ちを伝える
日々の小さな助けに対して「ありがとう」と言葉で伝えたり、手紙やメッセージカードにして渡したりすると、自己肯定感の向上に効果的です。
専門家への相談
産後ケアセンター
自治体や医療機関が運営する産後ケアセンターでは、家事代行や育児相談、宿泊による心身ケアを受けられます。夫婦で利用できるプランがある場合もあるため、事前に問い合わせてみましょう。
地域の保健センター
各市区町村の保健センターでは、保健師による電話相談や訪問相談、父親向けのペアレントトレーニング講座などを無料で実施しています。定期的に開催されるグループ交流会も利用すると同じ悩みを持つ仲間と出会えます。
精神科・心療内科
不安や抑うつ状態が続く場合は、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。保険適用での診療が可能で、カウンセリングや薬物療法、認知行動療法など専門的なアプローチで改善を目指せます。
相談先 | 主な内容 | 費用目安 |
---|---|---|
産後ケア | 家事代行、育児相談、宿泊ケア | 実費負担 |
地域の保健センター | 電話・訪問相談、交流会 | 無料 |
精神科・心療内科 | 診察、カウンセリング、処方 | 保険適用 |
パタニティブルーチェックリスト
パタニティブルーの早期発見に役立つセルフチェックリストです。以下の項目があてはまるかどうかを確認し、該当数で対処の目安をつかみましょう。
セルフチェック項目
No. | チェック項目(過去2週間) |
---|---|
1 | 夜間に何度も目が覚め、十分に眠れない |
2 | 急にイライラして家族にあたってしまう |
3 | 理由もなく悲しみや不安感が続く |
4 | 赤ちゃんのお世話に楽しさを感じられない |
5 | 食欲が減退し、体重が減ってきた |
6 | 集中力が低下し、仕事や家事が手につかない |
7 | 漠然とした焦りや圧迫感を感じる |
8 | 趣味や友人との会話に興味が持てない |
9 | 自分を責める気持ちが強くなる |
10 | 体がだるく、疲れが抜けない |
点数の目安と判断
上記10項目のうち、該当した項目の数で目安を確認してみましょう。
- 0~2点:心配ないかも?
- 3~5点:ややストレスが強い状態。生活リズムの見直しを検討
- 6点以上:パタニティブルーの可能性大。早めの対策や相談を
チェック結果別のおすすめ行動
スコア | おすすめアクション |
---|---|
0~2点 | 通常の休息と栄養バランスに留意し、妻や家族とのコミュニケーションを大切に。 |
3~5点 | 休日のリフレッシュタイム確保、育児・家事の分担見直し、友人や先輩パパへの相談。 |
6点以上 | 産後ケアセンターや地域の保健センターに相談。専門家によるカウンセリングや助産師訪問の利用を検討。 |
さらに詳しく知りたいときは
パタニティブルーや産後うつの知識を深めるには、以下の公的情報もご参照ください。
パタニティブルーかもしれないと思ったら
出産後の環境変化やホルモンバランスの変動で、父親も心身の不調を感じやすくなります。「もしかして自分も…」と思ったら、早めに対策を取りましょう。
セルフチェックで自分の状態を確認する
以下の状態が2週間以上続く場合は、パタニティブルーの可能性があります。
- 慢性的な疲労感や倦怠感を感じる
- 仕事中や育児中に集中力が低下している
- イライラや不安感が強くなる
- 夜眠れない、または過剰に眠ってしまう
- 食欲の増減が激しく、体重に変化がある
周囲への相談・サポートをお願いする
ひとりで抱え込まず、家族や身近な人に協力を求めましょう。
- パートナーに気持ちを率直に伝える
- 先輩パパや友人に育児の悩みを聞いてもらう
- 職場の上司や同僚に休息や業務調整を相談する
専門機関に相談する
セルフケアだけでは改善が難しい場合は、早めに専門家に相談しましょう。
機関名 | 問い合わせ先 | 受付時間 | 備考 |
---|---|---|---|
地域の保健センター | 最寄りの市区町村役場で案内 | 役場の開庁時間 | 市区町村によって異なる |
こころの健康相談統一ダイヤル | 都道府県・政令指定都市によって異なる | 都道府県・政令指定都市によって異なる | 詳細は厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤルについて」のページをご確認ください |
#7119 | #7119 | 24時間 (年中無休) | (救急車を呼ぶべきかも含めて、) 病院に行くべきか、行くとしたらどのような医療機関を受診すべきか相談できます |
精神科・心療内科 | 各医療機関の電話番号 | 医療機関により異なる |
日常生活で心がけたいポイント
以下の習慣を取り入れると、心身のバランスを整えやすくなります。
- 規則正しい睡眠を心がけ、寝不足を避ける
- ビタミンB群やタンパク質を含むバランスの良い食事を摂る
- 30分程度の軽い運動やストレッチを日課にする
- 趣味やリフレッシュ時間を定期的に確保する
- 日記やアプリで気持ちの変化を記録し、自己理解を深める
産後うつとの違い
パタニティブルーと混同されやすい「産後うつ」ですが、発症時期や症状の強度、継続期間、対処法などに明確な違いがあります。以下の表で主な相違点を整理しました。
項目 | パタニティブルー | 産後うつ |
---|---|---|
発症時期 | 妻の出産後すぐ~2週間程度 | 産後2週間以降~数ヶ月 |
持続期間 | 短期間(1~2週間程度) | 中~長期間(数週間~数ヶ月、場合によっては1年以上) |
症状の強度 | 感情の起伏や一時的な不安が中心 | 抑うつ感や無力感、自殺念慮など重度化のリスクあり |
原因 | 環境の変化や育児ストレス | 心理的ストレス、過去のうつ病歴、社会的サポート不足など複合要因 |
対処法 | 休息・家族の協力で改善することが多い ※不安や抑うつ状態が続く場合は、精神科や心療内科の受診を検討 | 専門的な治療(カウンセリング・薬物療法など)が必要 |
産後うつの症状
産後うつは、出産後2週間を過ぎても抑うつ気分や不眠、意欲低下が続き、日常生活や育児に支障をきたします。具体的には次のような症状があげられます。
- 持続的な抑うつ気分や涙もろさ
- 食欲不振または過食
- 睡眠障害(入眠困難や早朝覚醒)
- 集中力や判断力の低下
- 価値のない人間だと感じる罪悪感
- 自殺念慮や子どもを傷つける恐怖心
これらの症状が2週間以上続く場合は、早めに専門機関へ相談することが重要です。
産後うつの対処法
産後うつは自己判断で放置すると重症化しやすいため、次のような専門的サポートを受けることが推奨されます。
- 産科や小児科で心理相談を受ける
- 精神科・心療内科での診断・カウンセリング
- 必要に応じた抗うつ薬の服用
- 地域や母親教室での仲間づくり
- 家族やパートナーによる家事・育児の積極的支援
早期の診断と治療により回復しやすくなるため、気になる症状が長引く場合は専門家へご相談ください。
パタニティブルーに関連する書籍
まとめ
パタニティブルーは、環境の変化や生活リズムの乱れ、育児への不安が重なって起こる一過性の心身の不調です。症状は感情の起伏や睡眠障害が主で、多くは3か月以内に回復します。
十分な休息と家事・育児の分担、家族や地域の相談窓口の活用で改善が期待でき、マタニティブルーとの違いを理解しながら夫婦で支え合うことが大切です。長引く場合は、早めに精神科や保健センターに相談しましょう。