なぜ「パンどろぼう」は子どもだけでなく、大人にも大人気なのか?

たまたまTverをチェックしてたら「パンどろぼう」番組を見つけちゃいました!
フジテレビで2025年9月14日および21日の早朝に「前編」「後編」に分けて放送された「キャラビズジャーナル」という番組を参考にまとめます。
※ちなみに、岐阜県は放送エリア対象外。(東海テレビがフジテレビ系列の放送局にあたるのですが、)放送されず、この時間枠に釣り番組「釣りごろつられごろ」や情報番組「フットマップ」が放送されているみたいですよー!
絵本から生まれて今最も人気のあるキャラクター
千代田区九段下。「お天気キャスターとして心躍る」「東京のアメダスは北の丸公園にあるから」とウキウキで登場した上垣皓太朗アナ。
スタッフから「今日のテーマは絵本のキャラクター」と告げられた上、「絵本から生まれて今最も人気のあるキャラクターは?」と聞かれ、答えに困ります。正解が「パンどろぼう」と明かされると、「名前は存じ上げているのですが、ちょっと内容までは…」とトーンダウン。
そんな上垣皓太朗アナが、今回、KADOKAWAのオフィスビルに潜入取材!KADOKAWAは、漫画・小説・アニメ・ゲームなどを展開する総合エンターテイメント企業です。
(エントランスというか共用ロビーで早速パンどろぼうが歓迎してくれて上垣さん嬉しそうです。作家と編集者が打ち合わせをしたり、社員がミーティングに使ったりする場所だそうです)
パンどろぼうの概要
- 主人公は、美味しいパンを探し求める大泥棒(盗むものはパン)
- 1作目の出版は2020年(今年で5周年)
- 大人にも人気
- 著名人の中にもファンがいる(あいみょん、山本美月など)
(絵本は累計2万部でヒットといわれるところ)
パンどろぼうは累計480万部を記録
絵本なのに、こどもだけでなく大人にも大人気!
矢野経済研究所の調べによると、日本のキャラクタービジネス市場の規模は2.6兆円!
日本発のキャラクターは世界でも人気で、「世界IP売り上げランキング」でも日本のキャラクターが5つもトップ10入りしています。
| 順位 | IPコンテンツ名 | 売上金額 | 
|---|---|---|
| 1位 | ポケットモンスター | 総収益921億ドル(約13兆5千億円) | 
| 2位 | ハローキティ | 総収益800億ドル(約11兆8千億円) | 
| 3位 | くまのプーさん | 総収益750億ドル(約11兆4百億円) | 
| 4位 | ミッキーマウス | 総収益706億ドル(約10兆4千億円) | 
| 5位 | スターウォーズ | 総収益656億ドル(約9兆7千億円) | 
| 6位 | アンパンマン | 総収益603億ドル(約8兆9千億円) | 
| 7位 | ディズニープリンセス | 総収益452億ドル(約6兆7千億円) | 
| 8位 | スーパーマリオ | 総収益361億ドル(約5兆3千億円) | 
| 9位 | 少年ジャンプ | 総収益341億ドル(約5兆2百億円) | 
| 10位 | ハリーポッター | 総収益309億ドル(約4兆6千億円) | 
IPビジネスとは、アニメ、漫画、キャラクター、物語などの「知的財産(Intellectual Property)」コンテンツを、出版、グッズ、ゲーム、イベントなど、さまざまな媒体や分野に展開し、収益を最大化するビジネスモデルです。
キャラクターIPビジネスは、世界・日本国内共に需要が伸びている業界です!
大人も好きになる秘密が知りたい!
「大人も好きになる秘密が知りたい!」と上垣皓太朗アナ。日本一パンどろぼうに詳しいという担当編集者、角田望さん(パンどろぼうの第1作から編集に携わっている方)に話を聞きます。「実際に絵本を音読して、人気な理由を探してみてください」
「(絵本を開く前に)表紙にも人気の秘密が隠されているんです」

「パンどろぼうのイラストを見て最初にどう思った?」と聞かれた上垣アナ。
「かわいいけれど、かわいいだけでは済まない雰囲気がある」と答えました。まさに、そこにパンどろぼうの魅力があるのだそうです。正解!
人気の秘密①シュールなデザイン
パンどろぼうは目が特徴的。
目がくりくり可愛らしい表現のキャラクターが多い中で、パンどろぼうはすごく怪しい目つきをしています。
タイトル「パンどろぼう」の「ど」の濁点(゛)部分も目!
また、食パンから手足が生えているというデザインもすごく惹き付けられる要素です。(※上垣アナは手を「フォークが生えているのかと思った」と言い、「はじめて聞いた感想です」と返されていました)
このように、ついつい気になってしまうデザインが人気です。
担当編集者の角田望さんも「最初このキャラクターデザインが柴田ケイコさんから送られてきたとき、印刷してデスク回りなどに貼っていたら、通りすがりの社員たちから『これはなに!?』と声をかけられて好評だったため、『これは大人にも人気が出る』と確信した」と話していました。
人気の秘密②絶妙に気になるネーミング
「パン」と「どろぼう」に切り分けると、どちらも一般的な名詞なのですが、組み合わせた途端になぜか気になってしまう響きがあります。
上垣アナが言うように、「パンどろぼう」と口に出して言ってみたくなるんです。
表紙のイラストのデザインと相まって、「パンがどろぼうするのか」「パンがどろぼうされるのか」一体どういうことなの!?と気になって中身を読みたくなる、読者の想像をかき立てるネーミングです。

パンがパンを担いでいくとかシュールすぎて…(笑)「おれはパンどろぼう。おいしいパンを さがしもとめる おおどろぼうさ」
人気の秘密③とにかく美味しそうなパン
作者の柴田ケイコ先生自身もパンが大好き。パンを描くときに焼き色にこだわって描いたり、パン愛に溢れています。担当編集さんと「もっと美味しそうに!もっと美味しそうに!」と絵本作りに取り組んでいるそうです。
(校正作業や編集作業中にパンを食べながら作業すると原稿が汚れてしまうので、ぐっとこらえて仕事を終えた後に、1番美味しそうだったパンを食べるそうです。作品から影響を受けるくらい美味しそうなパンを描き上げているそうです)

それなのに・・・!「まずい」とショックを受けるシーンで大笑いをしてしまいました。これも「パンどろぼう」の魅力ですね♪秘密④で詳しく書きます。
人気の秘密④予定調和ではないストーリー
世界一美味しいパン屋さんから盗んできたのに、不味いはずがない…先読みしがちな大人にとってもハマる絵本です。「まずい」とショックを受けるシーンは本当に面白かったです。
人気の秘密⑤インパクト抜群の変顔ページ
こどもたちは変顔が大好き。
パンどろぼうは、作者の柴田ケイコさんにしか描けないタッチの変顔ページも魅力です。前述の「まずい」のページはあまりにも好評で、その後の第2作以降でも必ず変顔シーンを入れるようになったと言います。変顔はパンどろぼうの名物です。

第6巻の逃げるシーンでバナナを踏んで転ぶパンどろぼうの顔がめちゃくちゃ面白いです!「ずこー」のページです!過去最大級の変顔と上垣アナも言っていました。
顔マネやお絵描き、ファンレターも変顔ページのパンどろぼうが多いそうです。
ちなみに、角田望さん(担当編集者さん)曰く、「絵本は圧倒的に電子書籍よりも紙書籍で読まれやすいジャンル」「判型がコミックや文庫本より大きい」「絵本の世界観をあらわすのに見開きは非常に重要」とのことでした。
人気の秘密⑥泥棒なのに反省する主人公
失敗⇒反省⇒構成のストーリー展開
パンどろぼうは、盗みをはたらいて大失敗してしまった(世界一美味しいパン屋から盗んだのに不味くて、しかも直接文句を言いに行ってしまった)のですが、店主から諭されて泥棒は悪い事なんだと気づき、きちんと反省して、更生して、ひたむきに頑張っていきます。
絵本をヒットさせた戦略
絵本の第1巻が発売されたのが2020年の4月。コロナ禍の真っ只中でした。
絵本は、インターネット上の書店よりも本屋さん(実店舗)で買う割合が多いのに、行動制限中のコロナ禍でどうやって「パンどろぼう」をヒットさせたのでしょうか?
KADOKAWAさんも「コロナ禍で実際に店舗に行けない(実際に手にとって選べない)中、どう売ればいいのか?」と悩んだそうです。そこで取り組んだ戦略が↓
ビジネス戦略①WEBで全ページを公開
インターネットでも試し読みができるようにしました。
絵本は、大人が最初から最後まで読んで「自分の子どもに与えてもよいか」どうかを吟味してから買い求めるお客さんが多く、子ども自身も何度も何度も繰り返し読むものなので、全ページ公開で試し読みをしてもらっても問題ないと考えて実施したそうです。
ビジネス戦略②Xで情報発信
絵本発売前からX(旧Twitter)のアカウントを開設して、情報発信をしたそうです。
ビジネス戦略③インスタライブで読み聞かせを実施
作者の柴田ケイコさんと編集部の公式アカウントでインスタライブを行い、読み聞かせやワークショップを実施。ライブ配信をして情報を発信しました。
これらの結果、大人が知って「子どもたちに読み聞かせたい」ということで購入につながったとのことでした。
第1巻を作っているときから、「絶対にシリーズ化したかった」と話す角田さん。
絵本の特徴の
- 制作期間が長い
- 読者の年齢層が限られている
という点が、2巻の発売を急いだ理由だそうです。1巻発売後9か月で2巻が出来ています。
ゆっくり制作していると「1巻を読んでくれた子たちが2巻が出る頃には大きくなってしまって絵本から離れてしまう(絵本を必要としなくなる)」という懸念から生まれた戦略です。結果的に、シリーズとして定着し、知名度も上がって大正解だったようです。
柴田ケイコ先生が語るパンどろぼう制作秘話
作家の柴田ケイコさんは普段は高知県にお住まい。取材時にちょうどパンどろぼうのイベントと重なって東京に来ているとのことで、上垣アナとの”ご対面”を果たし、インタビューが実現しました。
- Qパンどろぼうが誕生した経緯を教えてください
- Aパンどろぼうの話を描く前に、「おいしそうなしろくま1」シリーズを制作していたところ、KADOKAWAさんの目に留まり、「他に食べ物のお話をつくれないですか?」と高知まで会いに来てくれた。 リンク
- Qしろくまのイラストはどうやって誕生したんですか?
- Aシュールな絵が大好きな柴田さん。ありえないことを考えるのも大好きで、とくに理由もなく、しろくまにパンをかぶらせたら面白いと考えた。「普段はパンなんてかぶらないじゃないですか」 ⇒「パンを動物にかぶらせる」というありえない設定の絵が誕生 
- Qしろくまから何故パンどろぼうに?
- A泥棒は覆面をかぶる。人間だったら顔が分からなければいいけれど、動物だったら、顔を隠しても体でバレる。⇒面白くない。 ⇒正体がバレないように、パンをすっぽりかぶれる動物 
- Qパンへのこだわりを教えてください
- A読者がパンを見て、「おいしそう」「たべたい」と思わなければ魅力が伝わらない。柴田ケイコ先生自身がパン好きなので、色合いなど特に美味しく見えるようにこだわっている。 柴田ケイコ先生が1番好きなパンはチーズパン2 
- Q「まずい」のシーンはどのように生まれたのですか?
- A思いっきり「まずい」シーンにしようとは思っていた。でも、最初のラフを描いたとき、「こわい」と思われないかな?とか心配だったけれど、編集者からOKをもらえて実現した。(角田さんはこの絵を見て絶対に使いたいと思った) 
- Q絵本作りをずっと続けていくのは大変なのでは?
- Aプレッシャーはゼロではない。 でも、映画でもなんでも「1作目が面白い」。パンどろぼうの1作目を超えようと思うとしんどい。 ⇒別の新たな作品を作るつもりで(常に新しい作品を作るつもりで)制作している。 
- Q編集者から見て柴田ケイコ先生はどんな存在?
- A今まで会った人の中で1番お人柄が素晴らしい。温かくて、このままの雰囲気の人。それが、ほのぼのとしたキャラクターとか美味しそうな食べ物とか、作中にあらわれていて、ハッピーな気持ちにさせてくれる。柴田ケイコ先生とお話していてもいつも元気をもらえる。柴田さんそのものが絵本のような存在。 
- Q次の構想は浮かんでいますか?
- Aまだ浮かんでいない。 今月、パンどろぼうの新刊(第7巻)が発売。絵本の中を「探す」という点がパワーアップしていて、大人でも楽しみ甲斐◎「1個1個見ても表情が違うし、楽しんで欲しい」 リンク「頭と手が動く限り、新しいパンどろぼうを生み出し続けたい」 
ここまで2025年9月14日(日)放送分
 
  
  
  
  


